谷川俊太郎さん

先月、谷川俊太郎さんが亡くなった。とても多作な巨人と、幸運にも同時代を生きることができたのは得難いものなんだと思う。

自分が言葉に興味を持ち始めたのは、たぶん高校生くらいのころ。そして本格的に言葉が気になるようになったのが一人暮らしを始めた大学生の時。日記をつけるのに、常にポケット国語辞典を持っていた。出かけるときにはジーンズやチノパンに文庫本を入れてたし、詩集を手に取るようになったのもこのころ。

ふとしたタイミングで、書店で見つけたアラーキーの写真集…と思ったら、詩集だったことがある。タイトルは「やさしさは愛じゃない」。これ、本当に衝撃を受けたんだよね。誰かに、大切な人に優しくすることは当たり前で、それは愛情の一環だと思っていたから。

谷川さんの作品を全部追いかけるような熱心なファンじゃなかったけど、とても影響を受けたのです。だから逝去の報がとても寂しいし、でもありがとうございました、という感謝の気持も湧いてくる。

「やさしさしかなかったんだね」なんて言われないように。もうちょっと頑張ろう。

やさしさは愛じゃない
谷川 俊太郎, 荒木 経惟

やさしさしかなかったんだね。
でもやさしさは愛じゃない、
やさしさはぬるま湯、
私はふやけてしまったよ。

ひっぱたいてくれればよかったのに、
怒り狂ってほしかったのに、
殺してもよかったのに。

あなたは私を褒めたたえてばかりいた。
その眼鏡の奥のひんやりしたふたつの目で、
男の、
欲望の、
きりのない、
みのりのない、
やさしさで。

谷川さんといえば、自分の中では一番好きなのが「朝のリレー」であり、衝撃を受けたのが上の詩だった。絵本も好きだったな。「もこ、もこもこ」「これはのみのピコ」「ともだち」。レオ・レオニの翻訳も良かった。「フレデリック」「どうするティリー」はとても素敵でした。

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